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蒼ずんでいく

日が落ちて、空の赤みが消えると視界が蒼ずんでいく。
鮮やかに咲いていた草花の黄色も、若芽のみずみずしい緑も、
薄っすらと墨を含み、色彩を奪われていく。
空も、木々も、瞬きもできないくらいの速さで、夜の色に変わっていく。

私も蒼く染まりながら、なんだか、置き去りにされたような感覚で空を見上げる。
烏の群れがねぐらを目指している。

幼い頃のことを思い出す。
昼と夜の境を見極めたくて、夕暮れのたびに目を凝らし、空を見た。
あのとき感じた焦燥感が、鮮明に蘇ってくる。

やはり、人は忘れる生き物なのだなぁ。と実感する。
祖父が亡くなった日。
夜が彼を連れて行くような、そんな気がして、日が暮れるのが怖かった。
本当に怖かったのに、つい今しがたまで記憶の奥に沈んでいた。
そのとき以来、昼と夜の境目に執着し、毎日、毎日、空を見ていたのに・・・。


すっかり暗くなった山の頂で、取り留めの無い回想に浸っていると、
最後の烏が寂しげに鳴きながら、闇に溶けた。

ふと、視線を落とすと、麓の街はまだおきていた。
いつからだろう、夜がこんなに明るくなったのは・・・。
人は、夜を明るくすることで、恐怖を打ち払おうとしたのか。

明るい街で暮らしていると、夜の感覚が狂ってくる。
宵闇に対する怖れを忘れ、昼と夜の境に関心を失う。
そうして心身のバランスを壊す。本人も気がつかないうちに・・・。

時折、私が山を欲するのは、そんなところに理由があるのかもしれない。
たまには、ランプの灯りだけで夜を過ごすのも悪くない。
蒼の世界を思い返しながら、独りバーボンを含む。

明日も晴れるだろう。
by leiji_loka | 2009-04-08 21:04 | word only

心に映る事象の記録


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